月ノ揺籠
日記とか感想とか絵とかお返事とか徒然に。 ワートリ:嵐時・諏訪荒・当奈良。 ※イラストや小説等の許可のない転載・発行を禁止します。
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その日、それは弾けた。
唐突に、鮮烈に。
目の覚めるような音を響かせて――――
『 はじまりの音色 』
「あった……」
ずらりと並んだ数百人の氏名の中、埋もれるように記されている自分の名を、雛森は見つけ出した。
私立瀞霊学園1年B組、出席番号23。
雛森はかすかに目を細めた。新入生の氏名が貼り出された掲示板は、暖かな陽光を反射しているせいか少しだけ眩しい。
見上げた空は見事な快晴で、今日のこの日を祝福しているよう。そよ風は春の陽気をはらみ、雛森の髪をなで、白雲を緩やかに運んでゆく。
ドキドキと心臓が早鐘を打っている。期待と、希望と、ほんの少しの不安を織り交ぜて。
けれど、今日からクラスメイトになる52人の氏名をざっと見たとき、雛森は愕然とした。
(ない……)
中学校で親しくしていた友人たちの名前が、ひとつもない。
もう一度、今度はじっくり隅々まで見返したが、やはりない。何度探しても、ひとりもいない。
(うそ……)
ざあ、と波が引くように、雛森の心から高揚感が去ってゆく。
新しい環境に、親しい友人がひとりもいない。雛森は特に内向的というわけではなかったが、ならば友達になればいいとすぐに考えられるほど、楽観的でもなかった。
暗く冷たい風が、どんよりと雛森の心を絡めとる。
そんな心地でいると、ふと、隣にひとが並んだ。
視線を感じたわけでも、ましてや声をかけられたわけでもない。
ただ、何とはなしに。
雛森は視線を向けた。
そして、目を奪われた。
陽光を透かし、あるいは弾き、きらきらと煌めく白銀の髪。掲示板を睨みつけるように見上げる横顔は整っていて、どこか精悍さを感じさせる。髪と同じ色をした睫毛は長く、うっすらと頬に影を落とす。その奥にある瞳は――――
ふいに、少年が振り向いた。
翠。
深い深い、翠緑の瞳。
刹那。雛森の中で、何かが、弾けた。
少年が怪訝そうに眉根を寄せ、雛森は我に返る。慌てて視線を逸らす。
行き場のなくなった目をとりあえず掲示板に向けると、顔が、全身が熱かった。
(あ、あれ……?)
そんな自分の異常に戸惑い、どうしてだか再び視線を横に遣ると、そこにはすでに少年の姿はない。
少しだけほっとして、けれどそれ以上にがっかりしている自分に気づき、雛森は驚く。
まさか。
だって話したことも、名前すら知らないのに。
ただ目が合っただけで――――。
そう、目。
綺麗な瞳だった。鮮やかな夏の、風にさざめく森の色。
意思の強さを表した、真っ直ぐな視線。強いひかり。
瞼を閉じれば、脳裏に焼きついたかのように蘇る。かあ、と、身体が、心が熱くなる。
音を聞いた。
目の覚めるような音。
あの翠緑の視線に射抜かれたとき。
まるで真っ赤な風船に針を突き刺したかのような、鮮烈な。
それはきっと、はじまりの音色――――
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ま、間に合ったかな?; 例の青春なシリーズの入学式ネタです。むしろ一目惚れネタ(笑)
ちょっと自分の中でむくむくと
結局設定は中学生じゃなくて高校生になりましたー。中学生だと色々と制約があるような感じがしてためらってしまうので;
サイトの改装はまだまだかかりそうです; 小説のタイトル目次をデカ枠に出すか細枠にだすか迷うー(どっちでもいいよ)
リンクはとりあえず完了したから、後は……なんだ(ぇ) トップかな。思ったよりもう少し?(をいをい)
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