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月ノ揺籠

日記とか感想とか絵とかお返事とか徒然に。 ワートリ:嵐時・諏訪荒・当奈良。 ※イラストや小説等の許可のない転載・発行を禁止します。

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 しとしと
 しとしと

 ぱらぱら
 ぴっちゃん――――



     『  雨のうた  』



 雛森は雨が好きだ。
 壁を衝くような激しい雨や、川を溢れさせるほどの強い雨ではなくて、しとしとと草木を濡らす、風のない静かな雨が好きだ。
 縁側でそっと目を閉じて、柱にでも寄りかかって耳を澄ませば。

 しとしと、しとしと
 ぱらぱら、ぴっちゃん――――

 耳朶をくすぐるのは、優しい優しい雨のうた。
 屋根を打つ音も、草葉を弾く音も、大地で跳ねる音も、それぞれがかすかに異なる。
 雨の合唱を聴くのも、雛森は好きだった。
 雨の日は視界がけぶる。景色が霞む。町並みは常より少しだけしんとして、空気はひんやりと肌を撫でる。そんな日に外出するのも悪くないと、雛森は思う。
 けれど。
 雛森はおもむろに瞼を開いて、背後を顧みた。
 畳に寝転がって本を読む、そこには銀髪の幼馴染の姿。
「日番谷くん」
 雛森の呼びかけに、けれど返ってくるのは生返事ばかり。
「お出かけしようよ」
「……雨がやんだらな」
 本に視線を落としたまま返された気のない言葉にちょっとむっとして、雛森は手と膝を使って這うように日番谷のそばまで行くと、読みふけっている本をえいっと取り上げた。
 不満げにしかめられた顔が、ようやく雛森に向けられる。
「昨日も一昨日もそう言ってたじゃない」
 頬を膨らませ、訴える。
「昨日も一昨日も雨だっただろうが」
「そんなこと言ってたらいつまで経ってもお出かけできないよ!」
「俺は別に出かけたくねぇ」
 そう言い放つと、雛森の手から本を取り返し、ごろりと背を向けてしまう。
 再び読書に没頭し始めた日番谷の背中を、雛森はむむむと睨みつけた。
 けれど、いかんせんそこは背中。目のない背中では何を考えているのかわからない。雛森の視線に気づいていないのか、はたまた気づいていて完全無視を決め込んでいるのか(長年の付き合いが後者だと告げている)、とにかく日番谷が動く気配はない。これっぽっちもない。
 ただ時々、規則的にページをめくる音が聞こえてくるのみ。
 むむむ、と、さらに雛森は日番谷(の背中)を睨みつけた。
 雛森は、雨の日が嫌いではない。

 しとしと、しとしと
 ぱらぱら、ぴっちゃん――――

 雨粒ひとつひとつが奏でる、優しい優しい雨のうた。
 静かな大合唱。
 雨音に耳を澄ませながら、常とは違う町並みを歩くことすら、好ましいと思える。
 ただ、唯一の難点は。
「雨の日にそんなにごろごろしてるとキノコが生えてきちゃうんだから」
「そりゃ結構。食費が浮くな」
 出不精な幼馴染みが、さらに引き篭もりに磨きをかけることか。


 はてさて、雛森のにらめっこは、いったいいつまで続くのか。

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 オチも甘さのカケラもなくてごめんなさい(笑)
 出かける予定のない日にさらさらぱらぱらと雨音が聞こえてくると、ちょっと静かな気持ちになれます。
 外出する日に雨だとめんどくさいことこの上ないんですがね;

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