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月ノ揺籠

日記とか感想とか絵とかお返事とか徒然に。 ワートリ:嵐時・諏訪荒・当奈良。 ※イラストや小説等の許可のない転載・発行を禁止します。

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「あ、あたし……も」

 俯いたまま、雛森は絞り出すように言葉を紡ぐ。表情を隠している黒髪から覗く耳朶は、赤い。
 やがて、意を決したように雛森は顔を上げた。まっすぐに日番谷を見つめる瞳がかすかに潤んでいる。

「あたしも、日番谷くんが好き」

 ……です、と。
 消え入りそうな語尾を伴って、雛森は再び俯く。垣間見える耳の朱は、さらに色味を増していた。

 それを、信じられない思いで、日番谷は見つめていた。

「……本当、か……?」

 ようやっと、それだけを声に出す。
 制服の裾を握りしめている雛森が、小さく頷いた。

 実感は、最初はさざ波のごとく。
 そして唐突に、津波のように日番谷の心をふるわせた。

 おもむろに腕を差し伸べる。
 触れる寸前、雛森は身を縮こまらせたが、手を払いのけるようなことはしなかった。
 日番谷はかすかな安堵を胸に抱いて、それでも恐る恐る、壊れ物を扱うように彼女を抱きしめた。

 ふわりと、優しいにおいが鼻腔をくすぐる。
 じんわりと布越しに伝わってくるぬくもりに、泣きたいような気持ちになった。

 ふと、雛森がかすかに震えているのに気がついた。抱きしめていなければわからないほど、小さく、けれど確かに震えていた。

「なんで、泣くんだよ……」

「だって……」

 涙声だった。鼻をすする音が聞こえる。

 それが嬉し泣きだと、日番谷は知っている。
 そう自惚れてもいいのだと、雛森が証明してくれたから。
 だから、腕に力を込めて、より強く、しっかりと抱きしめる。
 そして耳元でもう一度、想いの言葉を囁いた―――。

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 書くつもりはなかったんだけど思いついてしまったのでこっちに載せてみました。

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